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増井 一
Hajime Masui

キャリアコンサルティング振興協会
http://www.ccea.jp/
常務理事
EMCA会員

製薬会社において、MR・総務・人事に 携わりながら、社内のキャリア相談員 として、キャリアおよびファイナン シャル相談に長年従事してきた増井さん。
2016年7月、キャリアコンサルティング振興協会(CCEA)を創立し、理事を務めながら企業分野でさまざまな支援の取組を実践しています。
多くのキャリア・ファイナンシャルの相談 や研修講師の経験から、現場で 必要とされる知識やノウハウは、キャリアだけではなく、常にメンタルも融合している、と考えられています。そんな増井さんに、その活動やお考えについて詳しいお話をうかがってみました。

キャリアとメンタルは表と裏。
そしてもうひとつの要素

今、中高年の方が多くなってきて、中高年の方がこれから人生後半をどう頑張っていくかと考えるときに、やはり仕事はもちろんですが、お金の問題と健康の問題は必ず持ち上がります。仕事の相談に来る方もキャリアの相談といいながら実は話していくとメンタルの問題だったり、メンタルの話として聴いているとキャリアの話だったりと、キャリアとメンタルは表と裏なので、やっぱりキャリアの支援をするときにはメンタル面のサポートが欠かせなくなると思うのです。

どんなふうに働きたいか、どうキャリアをデザインしてゆくかは、そのまま、いかに生きたいかに紐づきます。主体的に前向きに生きるためには健やかなこころがいる。その人生を支えるにはマネーの存在も重要なのですね。

だから自分はキャリアコンサルタント、キャリアコンサルティング技能士の資格を取得し、次にFP(ファイナンシャルプランナー)の資格も取得しました。そして、社員の相談で、メンタルの話が出てくるものですから、じゃあメンタルを勉強しようと思ったのです。

ちょうどその頃、EMCAがスタートしたんですね。だから僕は1期生。もっと広い支援がしたくてEAPを学びましたね。復職支援にも関っていましたので、保健師さんたちと仕事をすることもあって、やっぱりメンタル面のきちんとした知識も必要だなって実感したものです。

ですから今、キャリア部会のやろうとしていることは、とても親和性が高いと感じます。キャリアとメンタルの統合的支援というものは、自分のこれまでの活動の中で常々重要で必要性を感じてきましたし、意識して実践してきたことだからです。

キャリアコンサルティング振興協会(CCEA)
の設立と現在

現在、私はキャリアコンサルティング振興協会(CCEA)という組織を立ち上げて活動しています。活動の目的は、キャリアコンサルタントの現場力向上と活躍の場を広げることです。メンバーには企業分野と大学分野と就労支援など分野の違う人がいます。、私は主に企業分野の担当で、在籍者をどうフォローするかというところをやっています。官公庁や企業のお仕事をする際には、フリーランスとして活動するよりも組織のほうがいいですからね。今、厚労省がセルフ・キャリアドッグの企業への普及活動をされていますね、花田光世先生が座長をされた推進委員会の委員として28・29年度に参画し、今年度は普及拡大加速化事業のアドバイザーをしています。企業へのセルフ・キャリアドックを勧奨するキャリコンのカンファレンスや毎月、人事担当者を集めて勉強会の開催など行っています。もともと企業で人事を長くやっていましたし、卒業する前まで教育研修担当をやっていました。どう人を活用していくかという人材育成の一環として。今、どの企業でも50歳代の社員はすごくボリュームがありますよね、それが65歳まで元気に働いて、元気に卒業してもらうためにはキャリア研修や個別相談が必要だよねっていうことでやってきています。

私は60歳の定年で退職し、独立しました。人事のコンサルをして人事制度設計のお手伝いや部長・課長のマネジメント研修、労働大学では47の労働局に研修計画官というポストがあるのですが、その方たちに民間企業における人材育成についての研修をしています。また、採用担当をしているときから大学生の支援をしたいと考えていたのですが、縁があって宇都宮大学の非常勤講師も始めました。そうそう、今ちょうど昨年度、厚労省の委託事業で技法開発というのをやらせてもらったのですが、若者や女性、中高年を対象とするツールを提供するものです。私は中高年の担当で中高年特有の課題を扱った技法を学ぶ研修を5回やったりしています。自分では考えてもいなかったところで様々な活動しています。

専門性を持って活動していくことで
活動領域を広げていく

企業で人事を23年やって来たので、そういった経験からお話ができることってあるんですよね。やはり自分の場合、一番のポイントはここ、キャリア(仕事)・メンタルヘルス(健康)・ファイナス(お金)、この3つの統合的な支援かと思います。キャリアコンサルタントは自分の専門性をベースにして活動しています。企業や大学で活躍できるキャリコンになるための勉強会なども企画してきましたが、なかなかうまくいきませんでした。やはり自分の専門性という軸を持っているうえで、それを広げていくというスタンスがないと活動の領域が広がらないんだと実感しました。

企業分野におけるキャリアコンサルタントの具体的な活動として次のようなことがあります。

1.キャリア相談の実施 → 個人のライフ・キャリア形成をサポート
2.節目研修の実施
①若手社員(入社3年)②中堅社員(30代)③中年社員(40代) ④中高年社員(50代)
3.管理者研修の実施 → 管理者のマネジメントをサポート
4.自己申告・社内公募制度の支援 → 応募などをサポート
5.ダイバーシティ開発支援 → 障害者・高齢者・女性活躍をサポート
6.ワークライフバランス支援 → 働きがい・モチベーションをサポート
7.EAP、多様な悩みを支援 → 心の問題、健康問題、職場復帰をサポート
8.セクハラ・パワハラ対応の支援 → コンプライアンス面でのサポート
9.安全衛生委員会マターの支援
10.雇用調整等の要因問題などの支援 → 社外転進をサポート

特に大手企業では今、部長クラスのマネジメントを経験した適性のある人にキャリコンを勉強してもらって、第一線の課長さんを支援する、ということに取組んでいたりします。組織開発の中で課長への支援をしてあげることに部長を活用する、これはいい流れではないでしょうか。本人も役職定年でやりがいをなくさないで、後輩の支援にまわる。人事もそういった部長クラスをどう使っていいか苦慮しているわけだから、適性のある部長さんたちにキャリコンを取ってもらって、そんなふうに活用したら、すごく人も活かせるし、いいと思うんですよね。今、第一線のマネージャーが一番困っているんですよ。プレイングマネージャーだし、だいたい課長に昇進すると半分以上の部下が自分より年上なんですよね。自分より経験豊富な人をどうマネジメントしていくかは大変ですよね。ですからそういう点をサポートしてあげるといいですね。

企業の考え方が変ってきている
人生100年時代をどう支援していくか

以前は、役職定年あたりから早く社外に自分の居場所を見つけて転身してほしいというのがメインだったと思うのですが、ここ数年で変ってきているんです。やっぱりそういう経験豊富な技術や知識のある人が社内に残ってもらわないと困るんだと、だから頑張って残ってほしい、と企業は言うんですよね。でもやっていることといえば、給料は半分以下で権限もないとか、モチベーションが下がることばっかりなんです。けれども会社の期待は以前と変わらず大きく、そのギャップたるやすごいものがありますよね。そこをどう埋めていくか、解決していくのが今の課題なのではないかと思いますね。

これから「人生100年時代」と言っているわけですから、これから50歳代の人ならまだ人生の半分残っているわけです。その半分をどう元気にいきいきと働いてくかという支援をすればいいわけで、別に60歳から65歳まで元気に働いてくれなんてことを企業が求めないで、「あなたの人生後半戦、全部含めてどう頑張りますか」って支援すれば、結局は65歳まで元気に頑張るわけです。そういう考え方に変えた方がいいって、社員に対して発信するメッセージを変えたらどうでしょうかって、企業には伝えています。結局65歳やそれ以降も元気に働こうとしたら、今から元気に働かないとダメなんですからね。
この先の人生全部という長いスパンで捉えるからこそ、今からこんな資格取ってみようかな、こんな勉強を始めようかなって、行動変容が起こるのだと思います。ですから企業の姿勢そのものが変ると、もっとキャリアコンサルティングの意味づけが変るんじゃないかなと思っています。

これまでの経験や実績をフルに活かして、エネルギッシュに活動を展開する増井さん。「キャリアとメンタルの統合的支援ができるのはEMCAならでは。その強みを活かしてキャリア部会はやれることがいろいろあると思う。これからぜひ実践力のある支援組織に育てていきましょう」と応援のメッセージをくださいました。



Profile
増井 一

一般社団法人 キャリアコンサルティング振興協会 常務理事
2級キャリア・コンサルティング技能士
1級ファイナンシャルプランニング技能士 (資産設計提案業務)
シニアライフ・相続アドバイザー
一般社団法人 キャリアコンサルティング振興協会 http://www.ccea.jp/

小倉 浩靖
Hiroyasu Ogura

株式会社ジオネクスト
http://www.geonext.co.jp/
人材支援サービス部長
EMCAキャリア会員

IT・出版・人材派遣などの分野で事業展開する企業の「社内カウンセラー」として活躍する小倉浩靖さん。
10年以上、相談業務に携わる小倉さんには、どんな人をも受け止める、柔軟で温かな懐の深さを感じます。そんな魅力のある小倉さんに、現在の想いを聞いてみました。

カウンセリングの力を信じるからこそ、専門家の配置を

―現在、どのようなお仕事をされていますか。

人材支援サービス部で相談業務を行っています。現在は「厚生労働省セルフ・キャリアドック事業」のセルフキャリアドッグ制度を導入するため、社内の各部署にはたらきかけているところです。セルフキャリアドッグ制度は、職業能力開発促進法に基づいた制度で、定期的なキャリアコンサルティングとキャリア研修を組み合わせて行う総合的な仕組みのことです。この制度では、キャリアコンサルティングを行うのは有資格者であることが原則ですが、「従業員から信頼が厚く、相談業務の経験が豊富」であれば無資格でもカウンセリングができます。極端にいえば、社内の営業職が相談業務に就くこともあり得るわけです。名目だけの制度にならないように、私がこだわったのは、相談者の話をきちんと聞ける専門家を配置することでした。


私は、カウンセリングの力ってすごいと思うんです。暗い顔で面談ブースへやってきた人が、数分後には明るい顔で帰っていく。手前味噌ですが、そういう人を何人も見てきてきたからこそ、実績のあるカウンセラーを配置したく、厚生労働省の制度導入支援事業を活用することにしました。

私がキャリアについて学び始めた4年前は「キャリア」という言葉が、社内でまだ浸透していませんでした。特に「キャリアカウンセリング」は、特別な人が受けるものだというイメージを持つ人が多かったかもしれませんが、徐々に変わりつつあると実感しています。キャリアコンサルティングの意義を分かりやすく発信していくことも、私の役割だと思っています。

サードプレイスで自己の再発見、社会性高い人材に

―キャリアについて、大切にしている考え方などはありますか。

社内のキャリア研修では、「自律性」「共感性」「社会性」の3つをキーワードに挙げています。

「自律性」……創造性をもって自ら考え判断し行動する(常識や慣例、多数決を疑ってみる)
「共感性」……相手の立場で考える(自分とは違う考え方を受け入れる)
「社会性」……業務だけではなく、広く社会から認められ必要とされる(指導だけでなく、支援・応援する)

これらを磨くことで、人を育てる組織風土を醸成し、組織全体の力が高まると考えます。
また、各々がこの3つを高めるために、企業と個人の双方ができる取り組みを紹介しています。企業の取り組みは、先ほどのセルフキャリアドッグ制度などで、個人の取り組みは「サードプレイス」を探すことが大切だと伝えています。「サードプレイス」は社会学でも使われる言葉で定義は様々ですが、私はシンプルに「家庭や職場以外の、居心地のいい第三の活動場所」ととらえています。「家庭」と「職場」という世界だけでなく、地域活動・サークル活動・ボランティアなど、「サードプレイス」を持つことは、価値観の違う人間との交流を増やし、自己理解を深めること、自分の新しい可能性を発見することにつながります。

活動領域は「支援」と名のつくものすべて

―キャリアについて学ぶようになったきっかけは?

最初は「仕事のため」でした。10年以上、派遣社員の相談業務をするなかで「もっとラクにできる方法はないか」と思ったことがありました。派遣社員の相談は、相談者の涙をみることも少なくありません。なので、話を聞いているほうも精神的に苦しいことが多かったです。相談者のためにも、自分がつぶれることなくラクにカウンセリングできるスキルを学びたいと思いました。また、面談という閉ざされた空間で起こっていることを、第三者に分かりやすく説明する時のための理屈を学びたいとも思っていました。実際に勉強すると、キャリアにまつわる知識や技能は、現代社会で必要不可欠なものになると感じたし、自分の会社にも必要なものだと思いました。

困っている人がいたらすぐ手を差し伸べられるように、自分の引き出しは多く持っておきたいと思っています。組織開発にも興味があるし、従業員支援、学生支援も。「支援」と名のつくものは全部やりたい。

なぜ「支援」に関心があるのか考えたことがあります。親がクリスチャンで、幼稚園から中学生まで教会に通っていました。教会では牧師様の話を聞くわけですが、もしかしたらそんな環境が影響しているのかもしれません。

キャリコンは「人をつなぐ社会のハブ」

―今後の展望を教えてください。

「人をつなぐハブ」のようなキャリアコンサルタントになりたいと思っています。相談者の抱える課題は、仕事や家庭、お金や法律に関わることまで様々です。どんな課題でも必ずリファーできるような体制を整えておくことが大切だと思います。困ったらキャリアコンサルタントに相談すればなんとかなる、と気軽に相談してもらえるようになったら嬉しいですね。

そんな「人をつなぐハブ」になるために、今は、色々なところに種を蒔く時期だと思っています。色々な研修会に参加したり、目の前の仕事のなかで出来ることを考えたり。そのうちのひとつが学生支援やキャリア教育です。高校生への採用活動では、「不採用でも、ハガキ1枚で終わらせない」「親御さんに心配させないよう、手紙を添える」「内定後から入社までしっかりフォローする」。単なる採用のためだけの活動ではなく、キャリア支援という側面もあることを忘れないようにしています。

高校の先生とのつながりもあるので、先生向けには「キャリア教育に関するご相談承ります」というお手紙を送っています。地味な活動に見えますが、じわじわとタイミングを待つのが私のスタイルなんです。ゆくゆくは、教育現場と企業の橋渡しをするキャリア教育コーディネーターの勉強もしたいと思っています。今蒔いている種が、10年後、20年後、どう育つのか、とてもわくわくしています。



Profile
小倉 浩靖

国家資格キャリアコンサルタント
TCS認定コーチングスキルアドバイザー
株式会社ジオネクスト 人材支援サービス部長
http://www.geonext.co.jp/